「働く喜び」が育む未来:八天堂ファームが拓く、農福連携の新しい形【農山漁村Biz】

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2025年04月22日
農山漁村Biz 農福連携 八天堂ファーム 遊休農地
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今回は、「農福連携」。農業と福祉が手を取り合い、働く人々のやりがいと、社会に求められる新しい価値を生み出す取り組みについてです。

株式会社八天堂ファームが広島県竹原市で実践する、農福連携の物語を、紹介していきます。

「支える側」になる喜び:農福連携に込められた想い

ふれあいP.3~5  農山漁村Biz 拡大PDF全ページを見る

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・農福連携とは何か?その基本的な考え方

・商工農福連携、八天堂が描く新しいビジネスモデル

・「支えられる側から支える側へ」人間尊重の哲学

・人との出会いが後押し:八天堂ファームの設立

・仕事の日々に生まれる変化:働く人々の声

・価値を高めるノウフクJASと広がる連携の輪

・おわりに

農福連携とは何か?その基本的な考え方

農福連携とは、「農業」と「福祉」が連携し、障害のある方や生活困窮者などが農業分野で活躍することを通じて、自信や生きがいを獲得し、社会参画を目指す取り組みです。これは単に仕事を提供するだけでなく、農業が持つ様々な効果や、自然との触れ合いによる心の安定など、様々なメリットを活かすものです。

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「支えられる側から支える側へ」人間尊重の哲学

八天堂ファームが農福連携に取り組む上で、最も大切にしている理念の一つが、社会福祉法人から寄せられた「支えられる側でなく、支える側になって自分の存在意義を感じてほしい」という言葉です。これは、働く人々が自身の能力を発揮し、他者や地域に貢献することで、自己肯定感を高め、生きがいを見つけてほしいという、人間尊重の深い哲学に基づいています。八天堂ファームは、様々な方が自信を持って働ける場所となることを目指しています。

八天堂ファームの挑戦:ぶどう栽培を通じた実践

八天堂ファームは、この理念を実現するため、社会福祉法人と共同で広島県竹原市のオーナー不在となったぶどう園で、生活に行き詰まりを感じた方々と共にぶどうを生産しています。かつて耕作放棄地になりかけていたぶどう園が、人々の働く場所として息を吹き返しています。

商工農福連携、八天堂が描く新しいビジネスモデル

「くりーむパン」から見えた課題:遊休農地と収穫物廃棄

株式会社八天堂ホールディングスは、冷やして食べる「くりーむパン」で全国的に知られています。その主力商品に各地のフルーツを使用する取り組みを進める中で、全国に広がる遊休農地の増加や、規格外などの理由で出荷されずに廃棄される収穫物が多いという農業が抱える課題を知りました。

経験から生まれた構想:農福連携ビジネスモデル

八天堂ホールディングスの林義之社長は、以前、千葉県木更津市で障害者就労支援を目的とした工場立ち上げに関わった経験があります。この経験から、農業が持つ可能性と福祉を連携させるビジネスモデルの構想を温めていました。

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人との出会いが後押し八天堂ファームの設立

事業化への思いを強くした林社長は、社会人大学院に進学します。そこで多くの人や場所との出会いに恵まれ、八天堂ファームを設立するに至りました。特に、広島県竹原市で介護福祉事業などを行う社会福祉法人宗越福祉会の伊藤大悟理事との出会いは大きく、伊藤さんが取り組むひきこもりなどの生活困窮者の就労訓練事業との連携を考えるようになりました。その後、偶然にもオーナーが急逝してしまった現在のぶどう園を竹原市から紹介され、農福連携の事業がスタートしたのです。

商業・工業・農業・福祉をつなぐ地域共生ビジネス

八天堂ファームが目指すのは、商業・工業・農業・福祉をつなぐ、地域共生のための新しいビジネスモデル「商工農福連携」の構築です。これは、八天堂グループ全体として取り組む壮大な壮大なビジョンです。

生産から加工、販売まで価値のサイクル

八天堂ファームでは、ぶどうの生産・販売だけでなく、収穫したぶどうをジャムなどに加工し、グループ会社の工場や他社メーカーで商品化しています。この製造工程にも障害のある方々が携わっています。生産から加工、販売まで一貫したシステムの中で、様々な人々がそれぞれの役割を果たし価値を創出します。

仕事の日々に生まれる変化:働く人々の声

悔しさが生んだ意欲:鳥獣被害を乗り越えて
八天堂ファームのぶどう園では、事業開始から5年目を迎える中で、働く人々に様々な良い変化が見られました。初年度には猪による鳥獣被害に遭い、大切に育てたぶどうの半数以上が 被害を受けました。

しかし、この悔しさが、働く人々の心に火をつけました。「休みの日にでもぶどう園に行きたい」と自ら意欲を見せたのは感動的な変化でした。

学生時代にひきこもりを経験したAさん(21歳)も、八天堂ファームのぶどう園で働く中で大きく変化しました。

2021年から宗越福祉会の事務作業やぶどう園での農作業に従事し、今では卸売・小売の販売手配まで任されています。初めは事務作業も行っていましたが、体を動かす農作業をより好むようになりました。「ここのぶどうは甘くて美味しいですよ。家族も楽しみにしています」と語る彼の 姿から働く喜びと自信が感じられます。林社長は、このような働く人々の前向きな変化を心から喜んでいます。

「自分の存在意義」を探して:仕事が与える肯定的な影響

八天堂ファームが大切にする「支えられる側でなく、支える側になって自分の存在意義を感じてほしい」という思いは、実際に働く人々の変化となって現れています。農作業と商品販売のような具体的な活動を通じて、彼らは社会に貢献しているという達成感と自信を得ています。仕事は単に生計を立てる手段を超えて、一人ひとりの人生に肯定的な影響を与える重要な要素となっています。

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価値を高めるノウフクJASと広がる連携の輪

ノウフクJASは、障害のある人が生産工程に携わった食品に付与される日本農林規格です。この認証マークは消費者に商品の品質だけでなく、その商品が作られる過程に込められた社会的価値を伝えています。

八天堂ファームは2022年7月にこのノウフクJAS認証を獲得しました。ぶどう原体だけでなく、障害者が製造過程に携わった加工品(スイーツ等)にもノウフクJASマークを使用して販売しています。認証普及のための努力も積極的にしています。ノウフクJASについて知ることは、農福連携を理解する上で役立つでしょう。

八天堂の認知度の高いブランドとノウフクJAS認証が出会い、相互に肯定的な効果を生んでいます。ノウフクJASマークが商品に付加価値を加え、逆に八天堂ブランドを通してより多くの人々に農福連携が知られるきっかけとなっています。

林社長は、個別ぶどう園事業を他の地域で再現することより、全国に約7000件ほどあるという農福連携事業を支援することに集中することが八天堂ファームらしい関わり方だと考えています。2024年8月には八天堂ファームも参加する『農福コンソーシアムひろしま』が発足しました。今後更に多くの協力会社を増やし商工農福連携事業を拡大していく計画です。

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おわりに

株式会社八天堂ファームが取り組む農福連携は、単に人手不足の解消や新たなビジネスの創出を超え、働く人々一人ひとりの人生に肯定的な変化をもたらし、社会全体に新たな価値を加える意味のある活動です。

「支えられる側でなく、支える側になって自分の存在意義を感じてほしい」という温かい心から始まったこの旅は、多くの人々に勇気と希望を与えています。八天堂ファームの活動やノウフクJASマークが付いた商品を通して、農福連携の現実とその重要性を直接感じてみましょう。

あなたの小さな関心が、この肯定的な動きをさらに拡大させる大きな力となるでしょう。

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